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     読書感想ノート                             



    心療内科    健康   (←クリックするとジャンプします)




 心療内科       


 専門医がやさしく教える自律神経失調症        
                                 井出雅弘  PHP
             
 当クリニック顧問の井出先生監修の本。自律神経失調症がどんな病気であるのかの
説明や,病院で行う検査や治療法,ライフスタイルや食事の工夫などについて,タイ
トル通り「やさしく」書かれている。おそらく自律神経失調症の解説書のなかでは一
番売れた本ではないだろうか。

                      
 軽症うつ病                     
                                  笠原 嘉  講談社現代新書 
        
 「ひょっとして自分はうつではないか」と考えた人やうつ病と診断された人,うつ
病患者を持つ家族の人がこの本を読むことでうつ病を理解し,どう対処すればよいか
のヒントとなる本。                             
 この本は「ひとりでにおこる」軽症のうつ病(内因性うつ病)を念頭に書かれたも
のである。軽症うつ病は「ゆううつ気分」「不安感」「おっくう感」の三つが特徴で
,周囲の人にも気づかれないほどであるが,これはりっぱな病気であり,抗うつ剤な
どによる薬物療法が必要であると主張する。                  
 笠原先生はうつ病研究の第一人者であるが,ストレスが原因でうつ状態になってい
るように見えても,ストレスは単なるきっかけでしかなく実は内因性うつ病であった
り,性格が原因によるうつ状態にみえても,慢性型の内因性うつ病である例が多いと
する立場に立つ。                              

                                      
 過敏性腸症候群はここまで治る            
                                  伊藤克人  主婦と生活社

 断定調のタイトルだけから判断して「これを読みさえすれば治るかも」と思う人や
逆に「ちょっとうさん臭い本だな」と感じる人もいそうだが,内容はいたって真面目
な一般向けの解説書である。診断や治療法の解説のほか,ストレス対処法や食生活の
工夫などが分かりやすく紹介してあり,過敏性腸症候群で悩む人や病気を理解しよう
と思う人のための本といえる。ただし特効薬的なものを期待している人はがっかりす
るかもしれない。                             

                                      
「やせ願望」の精神病理                
                   水島広子 PHP出版          

 筆者は,摂食障害になるのは社会的因子と遺伝因子にストレスが加わるため,と考
える。社会的因子とはたとえば「女性はやせている方が美しい」とする画一的な価値
観であり,遺伝因子とは新しいものを求めたり,逆に損害を被ることを恐れてしり込
みする性格傾向であるとする。                        
 そして摂食障害の治療法として,対人関係療法を提唱している。これは一言でいう
と,摂食障害の症状である過食ややせ願望を直接治療するのではなく,摂食障害を治
りにくくさせている対人関係というストレスの改善を狙うものである。      
「なぜ摂食障害になるのか」や「どうして治りにくいのか」の説明や治療法に関して
はさまざまな理論がある。筆者は,人間の性格を7因子にわけるクロニンジャーのモ
デルを使って摂食障害のメカニズムを説明することを試み,日本ではまだ広まってい
ない対人関係療法という治療法を摂食障害に応用しようとしている。       
 私はクロニンジャーのモデルも対人関係療法も詳しくないし,筆者の考えに全面的
に賛成するつもりもない。しかし摂食障害のメカニズムや治療法についての説明は明
解でうなずける点も多いと考えている。

                                      
拒食症と過食症 困惑するアリスたち          
                   山登敬之 講談社現代新書       

 自分が接した患者さんの言葉を借りて,拒食症や過食症を説明し,どうやったら治
るのかを述べている。この本を読めば拒食症や過食症の人の気持ちが理解しやすくな
るので,家族が読むにも適しているだろう。                  
 筆者は拒食症や過食症が治る過程を次のように考えている。それは       
@少女たちの身体が目を覚ますということ                   
A少女たちが自分の言葉で語りはじめるということ               
B自分の親,とくに母と心理的な距離をとろうとすること            
C自分の居場所を探そうとすること                      
である。私もこの意見におおむね賛成で,これらが拒食症や過食症が治るための重要
な要素だと思う。

                              
 イメージの病い──モデルとしてのぜんそく       
                                    鈴木秀男    清水弘文堂      
                                      
 喘息に悩む患者さん,とくに自分の病気をどう考えたらよいかに興味を持つ人に勧
めたい。                                  
 筆者は,喘息を「アレルギー」だけで説明することに反対し,「理由(いわれ)のな
い不安」を患者が抱いていることに注目する。そして「理由のない不安」を抱くよう
になったのは,母性が欠如している母親のもとで乳幼児期を過ごしたからで,そのた
め「自分は器官が弱い」といったイメージを持ったり「この世界で身体を持って呼吸
をし,体温調整をしながら生きる」ことに不安を感じやすいのだ,とする。    
 筆者の主張はあくまで一つの仮説であり,心療内科で広く認められているものでは
ない。ただし,喘息に限らず「症状が起こるのじゃあないかという不安がよぎったら
,実際そうなった」と語る患者さんは心療内科では珍しくない。私もイメージ(や思
いこみ)が病気を長引かせている例はよくあると考えているし,そうした患者さんの
なかには乳幼児期の母子関係が歪だった人もいると思う。            
 したがって,筆者の仮説が妥当かどうかよりも,本を読んだ後で各人が「自分の場
合はこの仮説が当てはまるかのだろうか」と検討し,もし当てはまると思ったなら,
筆者の提唱するアドバイスに耳を傾けたらよいだろう。             


「こころ」はどこで壊れるか──精神医療の虚像と実像 
                    滝川一廣    洋泉社         

 インタビューの形をとっているので,専門的な部分が多い割には読みやすい。  
 精神医学や犯罪心理学,思春期問題に興味を持っている人,「ボーダーライン(人
格障害)」「ADHD」といった病名で悩んでいる人,「カウンセリング」に過度な
期待を持っている人には特に勧めたい。                    
 著者は「こころ」というものはやっかいで不自由なものである。世間でこころを「
病む」と表現しているが,それは不自由な「こころ」と自分が「折り合えなくなった
」状態のことである。したがって治療の目標は内科や外科のように「悪いところを治
す」ではなく「なんとか不自由なこころと折り合いを付ける」ようになることだと考
えている。                                 
 そして精神失調(病気)は〔性格〕×〔心理社会的環境〕×〔身体や脳〕によって
生じるので,このどれか動きやすいところに働きかければいいと考えている。   
 筆者の考え方は理論ではなく,治療に長年携わる中で生れたものだと思われる。そ
れは私にとってもうなずける,大いに参考になるものである。          




 健康      


 健康食品ノート                    
                                    瀬川至朗  岩波新書

 この本は筆者が毎日新聞に連載した記事を加筆したものである。健康食品とは何か
に始まり,イチョウ葉エキスやプロポリスなどお馴染みの健康食品を検証している。
またダイエット食品や,ガンを治せるかという興味ある話題も提供する。     
 全編を通じて,できるだけ科学的かつ客観的に今,話題のさまざまな健康食品をと
りあげ,健康食品との付き合い方をを解説している。


                                      
 「赤本」の世界                   
                                     山崎光夫  文春新書 
  
  築田多吉の「赤本」は大正14年の出版以来,1000万部以上が出版されている本であ
る。赤本の内容は病気治療や健康法,応急処置,不老長寿術,死体の処置など多岐に
わたる。また自らが発明した梅肉エキスや卵油の作り方も本のなかで公開している。
 「赤本の世界」は「赤本」のエッセンスを紹介したものである。これを読むと,多
吉にとっては「健康道」とでもいうべき生き方があって,それを踏まえたうえで一つ
一つの健康法や治療法があると考えていることがわかる。この点が,通常の健康書や
病気本との大きな違いだろう。また最近は,数多ある自然食品や健康グッズを適切に
選びさえすれば,自分の健康が得られると勘違いしている人を見かけるが,こんな風
潮に警鐘を鳴らす本でもある。                        
	

健康病  健康社会はわれわれを不幸にする  
                               上杉正幸    洋泉社      

 さまざまなデータによると,日本人は生活の中で「最も大切なものは健康」だと考
える一方で「自分の健康に対して不安を感じている」人が多い。この矛盾がどうして
生じたのかについて筆者は考察している。                   
 たとえば,その理由として,筆者はガンをはじめとする成人病が疾病構造の中で大
きな比重を占めるようになった結果,早期発見や早期治療の重要が強調されるように
なった現状を指摘している。早期発見の考え方は,自分は健康だと思っている人でも
ひそかに病状が進行していることを前提としている。また,人間ドッグなどを行って
もあくまで今回,結果した範囲では異常がなかった,という報告でしかなく,将来に
病気にならないという保証をしてくれるわけではない。             
 たしかにそれでは,人はいつも病気になるに不安を抱えることになる。筆者はこの
矛盾の解決法として「異常がない健康」を目標にするのではなく,「生きがい」を目
的とすべきであり,健康は「生きがい」のための一つの条件でしかないと説く。  
 
                                    
「心」はからだの外にある             
                                      
                                   河野 哲也  NHKブックス  
                                     
 私には難解に思える部分が随所にあるが,それでも紹介したいと思ったのは,この
本が「自分」というものを重視する心理主義を痛烈に批判しているからである。現代
は本来なら環境や社会にその原因を求めるべきことでも,心理的原因に求める傾向が
ある。たとえばニートの問題を,その人の怠惰ややる気のなさに求め,その人を取り
巻く社会環境の要因を軽視していると説明する。                
 著者は生態学的心理学者J・ギブソンにヒントを得て,自分を取り巻く環境に働き 
かけることで「自分が充実して生きられる環境」を自ら造り出す重要性を説く。  
「自分探し」を心理学を学ぶことに求める人をみかけることは少なくないが,「環境
に働きかける」ことも自分探しになるという発想を持つことは大切だろう。    

                                      
 身体感覚を取り戻す──腰・肚文化の再生     
                                      
                                   斎藤 孝     NHKブックス
                                      
                                     
 この本の冒頭で、筆者は次のような問題提起をしている。            
〔最近,自己の存在感の希薄化がしばしば問題にされる。自分がしっかりここに存在 
していると感じられるためには,心理面だけでなく,身体感覚の助けも必要である。現
在の日本で自分のからだに一本しっかりと背筋が通っていると言うことができる者は
どれだけいるであろうか。〕                         
 そうなったのは、かっての日本にあった「腰を据える」や「肚を決める」などの「
腰吐文化」が喪失したことと関係あると訴えている。              
 そして、自然体で立つ、歩く、座るなどの基本的動作の重要性を説き、また「練る
、磨く、研ぐ、絞める、絞る、背負う」などの体の動きを表現する言葉が使われなく
なっている現状や、型を身につけるという発想の意義を強調している。      
 私も身体感覚の重要性を実感している。私たちは、つい感情や考えなどの「心」が
「体」とは独立してあるような錯覚を持ちやすいが、「心」は「体」の支えがあって
初めてしっかりしたものとなる。たとえば他人の話を聞いたとき、話の内容自体には
賛同できても、その当人の態度が「そわそわしている」「おどおどしている」と感じ
ると、信用する気にならないだろう。また、いくら「朝起きたら、こんなことをしよ
う」と思っていても、朝だるくて仕方がないとその気も失せてしまうものである。 
 したがって、身体感覚を養うことには大賛成である。ただし、身体感覚を養うには
腰肚文化の習得以外の方法もあること、そして腰肚文化の習得はけっして簡単ではな
いことも付記しておく。   
                        
                                       
   転機の心理学                   
                                       
                  杉浦健                 ナカニシヤ出版                
                                                       
                                      
 人はときに大きく変わるときがある。そんなときその人の中ではどんな変化が生じ
ているのだろうか。これがこの本のテーマである。転機を体験した人の話や闘病記、
成功談などを見聞きすると、不思議なほど共通点がある。それは、いよいよ行き詰ま
ったと思えるとき,ささいな出来事がきったけとなり、その後の大きな変化を生むと
いうものだ。筆者はこうした研究を試み、転機のプロセスを以下のようにまとめた。
 もちろん転機があった人すべてが同じプロセスを辿るとは思わないが、こうしたプ
ロセスを想定することは、病気に悩む人にとっても、また自分の生き方に疑問を募ら
せている人にとっても有益だろう。                      
1始まり:始まりは何かが終わるとき                     
 筆者はブリッジズの「『終わり』は何かがうまくいかなくなるときから始まる」と
いう言葉を引用している。また転機のプロセスには「変わりたいという動機づけ」が
必要とも述べている。                            
2空白の期間                                
 転機のプロセスにおいて、何らかの空白もしくは無為の時期がある。高橋は古い解
釈を捨て、新しい解釈を生み出すまでの過渡期ととらえている。         
3空白期間における屈曲点                          
 空白期間がある程度経つと「次第に何かをしなくては」といった前向きなエネルギ
ーが湧いてくる。                              
4変わるとき、変わる瞬間                          
「変わる瞬間」はしばしば意識状態が低下しているとき生じる。         
5転機の語り                                
 本当に変わったと確信するためには、変わったことが確認されるための時間や、そ
れを確認する心の中の作業が必要。                      
                                      
                                      
                                      
   インナー・ゲーム            
                                       
                  W.T.ガルウエイ  日刊スボーツ出版社         
                                       
 この本は直接的には「努力してもテニスが上達しない人」を対象に書かれたテニス
の教本であるが,アメリカではミリオンセラーとなった。それはテニス以外のさまざ
な分野で役立つからである。筆者の主張は一言でいうと「考えることを止め,見たり
感じたりすることを重視する」ことの勧めである。               
 たとえば「サーブにおける自分の欠点はラケットの位置が低いことだ」と頭では理
解してもできない人がいる。また「ここで負けたら,恥をかいてしまう」と考えるこ
とで,焦りを呼びせっかくの力が発揮できない人がいる。            
 こうした人に必要なものは,頭で考えて自分の体に命令することをやめ,ボールの
行方をじっくり見たり,自分の体の感覚に注目することだとする。        
 私自身はテニスをやらないが,私にもこの本は役立つと思った。それは「どうすれ
ばよいか」が分かっていても,焦りや緊張,嗜癖(くせ)のためできない,という問
題に取り組むヒントが書いてあるからである。                 
                           
    
         

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